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タンクらしさとは何か?

カルティエ タンクの歴史は、時計愛好家としての必修科目となっている(少なくとも、そうあるべきだと思う)。フランチェスカ・カルティエ=ブリッケル著『The Cartiers』によると、ルイ・カルティエは幸運なことに、前線での戦闘任務に従事するには年老いていたためドライバーとして活躍し、この前線での経験がタンクの着想に繋がったと記している。

“タンク”と呼ばれるのは、見た目が戦車に似ているからだ。具体的には、戦史家がしばしば「最初の近代戦車」と呼ぶルノーFTである。戦車は一回転する砲身を持ち、車体の両側には前後方向に大きく張り出したキャタピラ式の巨大なトレッドが付いていた。このトレッドは、タンクウォッチの両サイドにあるラグの役割を果たし、ストラップの取り付け部となるブランカード(訳注:仏語で“担架”を表す)のインスピレーションとなった。初代タンクの試作機「ノルマーレ」は、欧州戦線でアメリカ軍を指揮していたジョン"ブラック・ジャック"パーシング将軍に寄贈されたと言われている。

パーシング将軍がタンクらしき時計を着けている写真が現存していることから、この話は確かにあり得ることだが、真偽は不明である。しかし、1919年には「タンク ノルマーレ」が市販された。これは特注品で、わずか6本しか作られなかった。さらに1921年には、エレガントな丸みを帯びたブランカードを備えたタンクが初めて発売された。これが後世に「タンク ルイ カルティエ」と呼ばれるようになった時計である。


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